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筑波研究部

主な研究課題

(1)薬用植物の栽培に関する研究


(2)薬用植物の組織培養に関する研究

植物組織培養は、ガラス容器などの密閉した無菌的空間に、植物が成長するのに必要な養分などが入った培地を入れ、その中で植物を栽培する技術です。 近年、クローン増殖、人工種子、遺伝子組換え、バイオファームなど植物分野においてもバイオテクノロジー技術がすでに実用化されてきています。こうした現代 の植物バイオテクノロジーにおいて、共通して用いられる中心技術が植物組織培養です。
 植物には組織・器官の一部から植物個体を復元する能力があり、分化全能性と呼ばれています。植物組織培養では、植物ホルモンと呼ばれる化学物質を上手 く利用しながら、この植物のもつ分化全能性が最大限に生かされるよう、培養条件を検討します。この技術を利用しますと、種子が出来ない植物でも、短期間に大量 の苗を作ることが出来ます。また、病気に冒された植物でも、その一部を切取って組織培養することにより、もとの健全な植物を復元させることが出来ます。
 薬の原料となっている薬用植物には、依然野生植物の採取に頼っているものが少なくありません。野生薬用植物は、環境変化や開発の影響を受け、その数 が大幅に減少していますが、未だ有効な増殖法や栽培法が確立されていないものが多くあります。このような植物であっても、植物組織培養を作っておけば、生き た状態で保存でき、必要に応じて増殖させることが出来ます。また、薬用植物に含まれる薬用成分に関する研究や、薬用植物の遺伝子に関する研究も季節にかかわ らず行うことが出来ます。筑波研究部でも、様々な薬用植物の組織培養に関する研究を展開させています。
復元植物
植物組織培養の例と、その復元植物
左:金線蓮2種(台湾原産のランの仲間の薬用植物)
中、右:金線蓮復元植物


薬用植物の組織培養による大量増殖

 筑波研究部では、増殖するのが難しい薬用植物について、または優良な性質をもつ薬用植物について、植物組織培養による大量増殖法の確立を行っています。 以下は、トコンの例です。トコンはブラジルアマゾン川流域に自生する灌木です。日本ではその根を去痰薬(気管または気管支から喀痰を取り除く薬) として用 いています。薬局で良く見かける薬にも含まれているものがあります。当研究部の温室でもトコンを長年栽培しています(図1)が、種子が得られたことはありません。 このような種子が得られない植物では、植物組織培養を作るために、植物組織の一部を使用します。植物のシュート(茎葉)を殺菌剤で殺菌し、クリーンベンチ内で芽 の先端を取り出し、培地に植え付けます(図2)。温度、照度を管理しながら培養を続けると、小さな組織が成長し、シュート(茎葉)になります(図3)。 このシュートを分割し、サイトカイニン(植物ホルモンの一種、細胞分裂を促進するほか、芽の分化促進、老化抑制などの作用を示す物質の総称) が多く含まれる培地に移植して培養すると、マルチプルシュートと呼ばれる多数の芽がついた塊ができます(図4)。こうして芽を増殖させ、一つ一つ切り離して オーキシン(植物ホルモンの一種、細胞分裂促進、側芽成長抑制、発根促進などの作用を示す物質の総称)が含まれる培地に移植すると発根して植物体に復元されます (図5)。こうして得られた復元植物体は、土壌に移植しての栽培が可能です(図6)。このクローン増殖法の他、さまざま大量増殖法を確立し、理論的には年間10万 本程度の苗を増産させるシステムが出来ました。組織培養苗を実際に土壌に植えだして栽培条件を調べた結果、最低気温が10℃以下になると生育傷害が生じること、薬 用部位である根の薬用成分含量は、地上部が枯れる頃が最大となることなどが明らかになりました。
復元植物
復元植物

左上から図1、図2、図3、図4、図5、図6

(3)外国産未利用植物資源の開発に関する研究

(4)薬用植物の品質評価に関する研究

(5)薬用植物の基原種解明に関する研究





独立行政法人医薬基盤研究所
薬用植物資源研究センター

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