HOMEへ

筑波研究部

主な研究課題

(1)薬用植物の栽培に関する研究

(2)薬用植物の組織培養に関する研究

(3)外国産未利用植物資源の開発に関する研究

(4)薬用植物の品質評価に関する研究

 日本薬局方における生薬類の確認試験法に関する検討
 薬用植物は生薬として漢方処方や民間薬として用いられているが、原料が植物であるため、その品質は産地や栽培条件、収穫方法、調整方法などにより非常にばらつきがあるのが現状である。そのため日本薬局方では生薬の品質規格を定め、それにより重要な生薬の品質の向上を目指している。現在、日本で流通している生薬のほとんどは海外から輸入されており、国内における生産はトウキなどごくわずかな品目のみである。しかしながら輸入生薬は、その品質において、産地ごとにばらつきが認められる。生薬はその有効成分の含量が薬効に大きく影響してくるため、その含有量を厳格に規定する必要性がある。基原植物に関しては、産地と同じ種類の植物を用いることが多いが、ときには同じ生薬名でありながら基原植物が異なっているなど、生薬名、基原植物において若干の混乱が見られる。一般に生薬規格においては、その生薬の形態を観察し外観で性状を判断したり、その基原植物に特有の成分等の含有を確認して生薬の品質を判断する。確認試験における薄層クロマトグラフィー (TLC)法は、生薬に含有される成分に着目し、指標となる成分を選んだ後、その成分の検出の有無を検討する方法で、生薬成分の分析を行うためには簡便な方法で、生薬の品質を判断する有効な手段である。
 栽培研究室は厚生労働省と連携し、日本薬局方未収載の汎用生薬について、日本薬局方新規収載に向けた確認試験法の検討を行っている。ここにその一部を紹介する。

○生薬キョウカツ、テンマ、テンモンドウの確認試験法の検討

概 要

日本薬局方外生薬規格に収載されている生薬テンマ、キョウカツ、テンモンドウについて、より有効な確認試験法を確立するためにTLC法の検討を行った。
日本薬局方外生薬規格には、テンマはGastrodia elata Blume (Orchidaceae)(オニノヤガラ)の塊茎、キョウカツはNotopterygium incisum Ting ex H。T。Chang、または N。 forbesii Boissieu (Umbelliferae)の根茎及び根、テンモンドウは、Asparagus cochinchinensis Merrill (Liliaceae)(クサスギカズラ)のコルク化した外層の大部分を除いた根と規定されている。それぞれの確認試験は、ヨウ素試液による呈色、蛍光発色、フェーリング試液による呈色沈殿生成により行っているが、これら3品目の生薬の日本薬局方収載に向けて、より明確な確認試験を行うためTLC法による確認試験の検討を行った。

1)テンマ(天麻)

使用する検体として、中国貴州産(No.1)、浙江産(No.2)陜西産(No.3)、中国産(No.4)、四川産(No.5)、浙江産(No.6)を用いた。
生薬テンマとオニノヤガラ


テンマ確認試験(提出案)(第14改正日本薬局方第1追補に収載)

 本品の粉末 1 g にメタノール 5 mL を加え、15 分間振り混ぜた後、ろ過する。ろ液の溶媒を留去し、残留物をメタノール 1 mLに溶かし試料溶液とする。この液につき、薄層クロマトグラフ法により試験を行う。試料溶液 10 μL を薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする。次に酢酸エチル/メタノール/水混液(8:2:1)を展開溶媒として約10 cm 展開した後、薄層板を風乾する。これに希硫酸を均等に噴霧し、105 °Cで1分間加熱するとき、Rf値 0.4 付近に赤紫色のスポットを認める。


2)キョウカツ(羌活)

検体は、中国四川産(No.1〜2,4,6)、中国産(No.5)、日本産(ワキョウカツ、No.3)、中国産N。 forbesii(No.7、 8)を用いた。
キョウカツ

生薬キョウカツの市場流通品(3はワキョウカツ)

展開培養

試料のTLC (ODSプレート) (展開溶媒 MeOH:H2O=9:1,検出 UV照射)

キョウカツ確認試験(提出案)(第14改正日本薬局方第1追補に収載)

 本品の粉末 0.3 gを共栓遠心沈澱管に入れ、 ヘキサン 3 mL を加え、10分間振り混ぜた後、遠心分離し、上澄液を試料溶液とする。この液につき、薄層クロマトグラフ法により試験を行う。試料溶液 10 μL を薄層クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲル(蛍光剤入り)を用いて調製した薄層板にスポットする。次にメタノール / 水混液(9:1)を展開溶媒として約 10 cm 展開した後、薄層板を風乾する。これに紫外線(主波長 365 nm)を照射するとき、Rf値 0.5 付近に青白色の蛍光を発するスポットを認める。このスポットは、紫外線(主波長 254 nm)を照射するとき、暗紫色を呈する。

3)テンモンドウ(天門冬):検体はすべて中国貴州産を用いた。

クサスギカズラと生薬テンモンドウ

化学構造式と試料のTLC

テンモンドウ確認試験(提出案)(第14改正日本薬局方第1追補に収載)

 本品の粗切 1 gにn-ブタノール/水混液(40:7)5 mLを加え、30分間振り混ぜた後、ろ過し、ろ液を試料溶液とする。この液につき、薄層クロマトグラフ法により試験を行う。試料溶液10μLを薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用いて調整した薄層板にスポットする。次に1-ブタノール/水/酢酸(100)混液(10:6:3)を展開溶媒として約10 cm 展開した後、薄層板を風乾する。これに希硫酸を均等に噴霧し、105 ℃で2分間加熱するとき、Rf値0.4付近に最初赤褐色後に褐色を呈するスポットを認める。

○その他、最近生薬ブシ(第14改正日本薬局方第2追補に収載)、トウガシ(第15改正版に収載予定)についても検討を行った。


(5)薬用植物の基原種解明に関する研究


独立行政法人医薬基盤研究所
薬用植物資源研究センター

Copyright (C) Research Center for Medicinal Plant Resources, Nibio 2010